研究者のための英文校正比較

サービス概要

Grammarlyは人工知能、機械学習、ディープラーニング、自然言語処理等を用いたクラウドベースのアプリケーション。ウクライナ人であるAlex Shevchenko、 Max Lytvyn、 Dmytro Lider氏の３人により、2009年に開発された。英語のスペル、文法、句読法、明瞭さなどをチェックし、適切な文章となるよう修正案を提示することができる。

基本的に無料で使用することができるが、無料版では、スペル、文法、句読法、簡潔さのチェックに制限されている。有料版のプレミアムでは、明瞭さに焦点をあてた文のリライト、トーンの調整、剽窃チェック、語の選択、フォーマルレベルのチェック、流暢さの向上などの機能が追加される。

余談ではあるが、Grammarlyは、2014年以降ロシアとベラルーシから得られた総収益と同額（約500万ドル）をウクライナ支援の各種団体へと寄付し、両国からのアクセスをブロックしている。

GrammarlyのAI校正でできること

Grammarlyは、Windowsデスクトップアプリ、ブラウザ拡張機能、ワード・Google Docsのアドイン、または、ウェブブラウザ上で動作するウェブエディターで使用することができる。ここでは、すべての機能を使用可能なウェブ版について紹介する。

Grammarlyのウェブサイトでアカントを作成後、ウェブエディターに文章をコピーペーストするか、文書ファイルをアップロードすることで、テキストの編集とAI自動校正ができるようになる。

文章の自動校正

テキストを入力すると、AIが自動的に文章をチェックし、修正候補に下線を引いてマークしてくれる。マークされた単語をクリックすると、右側に対応するサジェスションが表示される。

全ての文章はクラウド上に保存が可能で、自分のアカウントにログインすれば、場所とデバイスを選ぶことなく、編集・AI修正が可能となっている。

アシスタントツール：統計データ

ウェブエディターの右側サイドバーから、統計データにアクセスすることができる。このツールでは、現在入力されている文章を分析し、ライティングスコア、ライティングの問題点、読みやすさ、使用されている語彙の分析などを数値化して示してくれる。

アシスタントツール：ゴールの設定

このツールでは、「文章の対象者」「フォーマルさの度合い」「文章の種類（アカデミック、ビジネス、e-mailなど）」「意図（通知、記述、説得など）」を選択することができ、AIの修正をより適切なものへと設定できる。

今回使用したGrammarlyは無料版のもので、スペル、文法、句読法、簡潔さのみに制限されている。可読性を上げるために文を書き換えたり、ある文をより適切な位置へと移動させるようなことは、行なわれていない。そのため、修正候補となる箇所の数は、ややひかえめな印象を受ける。

詳細はAI校正の比較にて述べるが、Grammarlyによる単数形・複数形、定冠詞、助詞等の修正はかなり優秀と言って良いレベルである。同じ文書を人間の校正者が校正したものと比べると、人間エディターの修正箇所がAIチェックから漏れていることもあるが、AIが指摘した箇所はほぼエディター修正と重なっている。簡潔性のチェックも上手く機能しており、人間エディターが冗長として削除した部分が、Grammarlyでも「冗長」とコメントが入り、削除を勧めている。

語のチェックも適切に行なわれており、ハイフンで連結されるべきでない語にハイフンが入っていた場合、その誤りが正しく指摘されている。反対に、ハイフンで連結されるべき語には、その修正が正しく行なわれている。

別のAI校正では、複雑な文構造の場合に、AIの修正が入ったことで文法構造が破綻し非文となる現象が見られたが、Grammarlyではそのような現象は見られず、適切な文法の提案が行なわれていた。また、エディターが見逃していた小さなミス（母音の前の”a”は”an”としなければならない等）を複数個見つけている。

リリースから十年以上かけて積み重ねられたプログラムはかなり優秀なもので、ネイティブに近い英語力を持つ人や、英語論文の経験が豊富な人であれば、ごく単純なネイティブチェックは不要なのではないかと思わせてくれる力量がある。